2008-01-01から1年間の記事一覧

ミシェル・フーコー(2007)『社会は防衛しなければならない』石田英敬訳,筑摩書房

ミシェル・フーコー講義集成〈6〉社会は防衛しなければならない (コレージュ・ド・フランス講義1975-76)作者: ミシェルフーコー,Michel Foucault,石田英敬,小野正嗣出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2007/08/01メディア: 単行本 クリック: 36回この商品を含…

「語りえぬもの」の抑圧

「語りえぬもの」を抑圧するという議論はしばしばなされてきた。たとえば、「語りえぬもの」としてのサバルタンを西欧言語が代弁・表象するという図式の暴力性を暴露したサイードの「オリエンタリズム」はその典型だ。しかし、ここでは「語りえぬもの」が我…

これが「正しい」戦争というものか!さあ、もう一度!(ボム)

マイケル・ウォルツァー(2008)『戦争を論ずる―正戦のモラル・リアリティ』駒村圭吾他訳,風行社より。 私たちはみな、戦争を論ずるべきであり、民主主義国家に生きる市民にとってそれは政治的責務(political obligation)にほかならない、この本で私が主張し…

難民問題に関する先行研究批判(2)

本屋でふと見かけた萱野稔人の『国家とはなにか』の一節より(因みに、この本、久々に「衝動買い」してしまいました(苦笑))。 国民国家批判が正当にも指摘するように、国民国家の形態は近代をつうじて形成されてきたものであるならば、それ以前には国民的…

「ハイパー近代」の試金石としてのチベット

土佐弘之(2008)「方法としてのチベット」『現代思想』第36巻第9号,24-32頁より。 経済的な側面に限って言えば、既に、「西洋をもう一度東洋によって包み直す」動きが見られるという説もある。・・・・・・しかし、最近のネオリベラルな中国資本主義の興隆が示して…

W田君の卒論構想

土曜日にW田君の卒論の構想をちらっと聞いた。文学部英文学科に所属しているW田君は、元々ヘミングウェイや最近流行っているもので言えばポール・オースターなど、アメリカ文学を好んで読んでいたようで、卒論でもヘンリー・ミラーというアメリカ人作家の『…

鋼鉄プリンさんへの応答―杉田俊介『無能力批評』について

無能力批評―労働と生存のエチカ作者: 杉田俊介出版社/メーカー: 大月書店発売日: 2008/05/01メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 258回この商品を含むブログ (43件) を見る杉田俊介(2008)『無能力批評 労働と生存のエチカ』大月書店、実際に読んでみました…

〈帝国〉における難民(1)

土佐弘之のとある論文から。 難民は、主権国家の排除項というより、『長い二一世紀』システムの中心部ないし(ポストモダン的)《帝国》の排除項といった性格を持つようになってきている。国内避難民の現象に看守できるように、先進資本主義諸国の脱福祉化に…

チェックしたい文献(1)

Michael Dillion,"The Scandal of the Refugee: Some Reflection on the "Inter" of Intaernational Relations and Continental Thought",in Moral Spaces:Rethinking Ethics and World Politics. edited by David Campbell and Michael Shapiro. Minneapoli…

伊豫谷登士翁(2002)『グローバリゼーションとは何か』平凡社新書 に関するメモ

目についたところをとりあえずメモる(笑)。 グローバル資本が創りだしてきたのは主権あるいは統治の新しい形態です。これまで主権は、もっぱら国家に集約されてきました。しかし越境する企業活動は、国家のさまざまな主権行為を越えて稼動することを可能と…

6月前半(1、〜2週)に読む本

最近、2つゼミに出てることもあって、中々思うように読書が進まなくなっているので、ここに読書予定を記すことによってペースを掴めたら良いなぁ・・・という希望的観測に基づいた試みです(苦笑)。 カール・シュミット(2000)『政治神学』田中浩他訳,未来社(…

話はソレルけど・・・

[rakuten:book:12132309:detail][rakuten:book:10436059:detail]カール・シュミット(1923)「現代議会主義の精神史的地位」長尾龍一編『カール・シュミット著作集』慈学社出版,53-118頁より。 ソレルにとって行動とヒロイズムへの資質、あらゆる世界史的活動…

今後の方針

土曜日の論文構想発表会で、「難民に関する先行研究が上手いこと集まらない」といったことを先生に言ったら、「岡野八代」「岡真理」あたりを読んでみると良いよと言われたのですが、さしあたり次のような文献のことを仰っていたのでしょうか?岡野八代(2003…

カール・シュミット(1932)「政治的なものの概念」長尾龍一編『カール・シュミット著作集』慈学社出版,247-311頁

カール・シュミット著作集 (1)作者: カール・シュミット,長尾竜一出版社/メーカー: 慈学社出版発売日: 2007/06メディア: 単行本 クリック: 11回この商品を含むブログ (8件) を見る 政治的行動と動機がそこに帰着せしめられるところの特殊政治的な区別は友敵…

2008年度O賀ゼミテキスト目録

昨日の話し合いによれば、以下のような本をテキストとして使用することになったっぽいです。 (1)カール・シュミット(2000)『政治的なものの概念』田中浩他訳,未来社 (2)カール・シュミット(2000)『現代議会主義の精神史的地位』稲葉素之訳,みすず書房 (…

フーコーとハイエク

酒井隆史(2001)『自由論 現在性の系譜学』青土社から。 フーコーの議論には言うならば「行為の存在への圧縮・還元」という事態への嫌悪と抵抗が一貫しているように思う。存在の同一性へと行為をすべて放り込んでしまう「戸籍的権力」への抵抗。・・・・・・たとえ…

堤未果(2008)『ルポ貧困大国アメリカ』岩波書店

ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書) [ 堤未果 ]ジャンル: 本・雑誌・コミック > 文庫・新書 > 新書 > その他ショップ: 楽天ブックス価格: 799円 そこ(市場原理の実態)に浮かび上がってくるのは、国境、人種、宗教、性別、年齢などあらゆるカテゴリーを超え…

土佐弘之(2006)『アナーキカル・ガヴァナンス 批判的国際関係論の新展開』御茶の水書房

アナーキカル・ガヴァナンス―批判的国際関係論の新展開作者: 土佐弘之出版社/メーカー: 御茶の水書房発売日: 2006/09メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (7件) を見る 「現実の壁」を補強するイデオロギーとしての現実主義を乗りこえるため…

日本の「福祉国家」に関するノート(1)

金子勝(1999)『市場』岩波書店より*1。金子は現在の日本の政治的状況について、「社会民主主義が未形成なままニューライト的な市場原理主義が闊歩」*2していると述べ、55年体制における社会党が「平和主義」を強調したがゆえに欧米の社会民主主義政党的な役…

金子勝(1999)『市場』岩波書店

市場 (思考のフロンティア)作者: 金子勝出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1999/10/22メディア: 単行本 クリック: 15回この商品を含むブログ (12件) を見る 実は、市場の暴走は、人々の生活のもっと奥深いところにまで入り込み、人間のあり方さえ変えてしま…

アントニオ・ネグリ=マイケル・ハート(2003)『〈帝国〉 グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』水嶋一憲他訳,以文社

<帝国> グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性作者: アントニオ・ネグリ,マイケル・ハート,水嶋一憲,酒井隆史,浜邦彦,吉田俊実出版社/メーカー: 以文社発売日: 2003/01/23メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 94回この商品を含むブログ (110件)…

〈帝国〉における難民(1)

土佐弘之のとある論文から。 難民は、主権国家の排除項というより、『長い二一世紀』システムの中心部ないし(ポストモダン的)《帝国》の排除項といった性格を持つようになってきている。国内避難民の現象に看守できるように、先進資本主義諸国の脱福祉化に…

チェックしたい文献(1)

Michael Dillion,"The Scandal of the Refugee: Some Reflection on the "Inter" of Intaernational Relations and Continental Thought",in Moral Spaces:Rethinking Ethics and World Politics. edited by David Campbell and Michael Shapiro. Minneapoli…

反動的批評家・東浩紀

『フリーターにとって自由とは何か』の著者、杉田俊介のブログ(http://d.hatena.ne.jp/sugitasyunsuke/)から、東浩紀の次のような記事を見つけた。「シンポに向けてのメモ」(http://www.hirokiazuma.com/archives/000361.html)「シンポに向けてのメモ2」…

難民問題に関する先行研究批判(1)

ネグリ=ハートは、近代性を批判する理論としてのポストモダニズムやポストコロニアリズムについて、次のような指摘をしている。 私たちは、ポストモダニズムとポストコロニアリズムの理論が、いずれは行き詰まるのではないかと疑っている。なぜならそれらは…

「僕は皆さんとは立場が違うけれども、皆さんのような運動を否定するつもりはありません」

これは、僕がI水ゼミの合宿に初めて参加して、築城基地周辺の住民が中心となって行われている座り込み運動を見学した時に、その場で発言を求められて言った言葉です(昨日、U野先輩と飲みながら話をしていて思いだしました(笑))。この発言、今読むだけ…

植民地主義と皇民化政策

ヨーロッパ人の〈自己〉同一性は、この弁証法的運動のなかで生み出されるのである*1。ひとたび植民地的主体が絶対的な〈他者〉として構築されるや、今度はそれより高い統一のうちに包摂される(抹消され持ち上げられる)。絶対的な〈他者〉は、もっとも固有…

〈帝国〉の枢密顧問官、サミュエル・ハンチントン(2008/02/01)

噂の「〈帝国〉の枢密顧問官、サミュエル・ハンチントン」を、アントニオ・ネグリ=マイケル・ハート(2004)『マルチチュード(上) 〈帝国〉時代の戦争と民主主義』幾島幸子訳,日本放送出版協会,75-79頁より(笑)。 「・・・今日、政治学者の大部分は、秩序の維…

「恥的思考」のはじまりはじまり

どうもはじめまして。この世界のどっかで大学生をやっているらしいFoucaultlianです(笑)。このブログでは、来るべき来年度の論文執筆に向けての「恥的思考」の軌跡を晒していきます。「恥的思考」というのは、それがこのブログに書かれる時点ではまだまだ…

アガンベンと生殺与奪の権(2)(2007/11/14)

ジョルジョ・アガンベン(2000)『アウシュヴィッツの残りのもの―アルシーヴと証人』上野忠男・廣石正和【訳】,月曜社を読んだので、今日はそのことについて(今月は「アガンベン祭り」です(ボム))。 まず、Amazonにおける本書のレビューを引用してみます。 …